続・ドキュメンタリー風告白談
5月10日付 ドキュメンタリー風告白談の続編です。
今度はSMからは距離があるかもしれませんが。
話題のある事件の解明と、2度とこのようなことが起きないこととを祈願しての公開です。【近未来の某ネット掲示板の管理者】
1.
いつぞや某トールフェチ向けテキスト創作サイトの管理人だ。
やっぱ、こないだの顛末書くことにするよ。
あの後、何人かの女生徒たちから同じ方法でなぶりものにされ辱められた。
二人分のオシッコを飲めた、って認められたんだろうな、部室から叩き出されたオレはコンビニの包みを置いてあった草むらでゲエゲエ吐いた。
それから、グラウンド隅の水道の所まで行って、口や鼻を漱ぐ。そうさ、このザマじゃ道路なんかに出られないよ。
だが、これが裏目に出たんだ。偶々パトロール中の警官が近くを通りかかったんだよ。
そうだよなあ。夜中だもの水道の音が響くわな。
オレは現行犯逮捕されてしまった。
そして、取調べの結果は?
変質者であるオレは女子高に侵入し、屋外トイレの便器を嘗め回し便溜りの水を啜っていた、こういうことになってしまった。
…まあ、黙秘は続けたんだがなあ。主催しているサイトが災いした。
いや、オレのサイトは、こんな趣味じゃないぞ!
もう、格調高き特殊性癖サイトとまでは言わんけどさあ。
そこらの同列サイトとは一線を画しているつもりだ。
こないだも言ったけどよう。BBSも排泄物を口にするなどの記述がある作品または書き込みは厳禁している。
…そうなんだ、原因はリンクサイトなんだよ。調べて貰えば分かるが、この手の記述があるところもある。
お陰で、オレも同一趣味ということにされちまったんだよなあ。
ま、入院という口実でしばらくサイトを休まざるをえなかったがな。
でも幸い素顔は晒してないもので、WEBでの信用を失うことはなく、サイト自体は継続できた。
とはいうものの、もうこの町には住むことができない。
オレは遠くへと引っ越した。
2.
世界遺産・白神山系の南麓に位置するこの町は長閑だ。
町が試みとして作ったこの団地がオレの新居さ。
田舎だな。けど都会と同じくベタベタした近所づきあいのないのがオレ向きだ。
いやいや、それどころか田舎と都会のよいとこ両取りの天国かもしれない。
表立って誰を注目することもなく、誰からも注目されることもなく。
もっとも小学生並みの体格に加え、ネクラ、影薄と3拍子そろった心霊写真のような存在のオレなど、たとえ注目されたくたってされようがないからな。
まあ、オレはPC一台あればどこにいようと同じことだ。
せいぜいまた、エロ小説でも書いて楽しむとしよう。
そうそう、重要なことを言うのを忘れてた。
2軒隣に、小学生の娘のいるバツイチ女の家があるんだ。
ん? なんとか小学校3組女子みたいな娘かよ? だって?
違う違う。母親のほうさ。
なんせ、あんな目に遭わされたんだからなあ。もうガキはこりごりだ。
っと、その母親なんだが。年の頃は30をちょっと出たくらいかな?
ま、オレの小説の定番キャラのように荒唐無稽なデカ女ではないものの、それでも大抵の男どもよりは大きい。
ヒョロヒョロのっぽではなく、肩幅の広く胸板は厚く、腰も張った均整のとれた体格なのが嬉しい。
極秘に調べたところによると、若いころ関東の温泉地で仲居をやっていたらしく、それでこのようなオレ好みの体型になったんだろう。
長い髪… 昔なら流行ったであろう面長の瓜実顔… オミズ系のケバい雰囲気…
越してからいくらもたたないうちに、オレのPCのHDはこの女の写真で埋まった。
高校生たちの写真は警察に押収されちまったもんな。新しいオカズを探す必要があったんだよ。
そうさ。食前食後に3回ずつのオナニーがオレの日課だもの。
けど…
ある日この北の町に、大変なことが起こったんだよ。
あの日ばかりは流石のオレも、丸一日下半身を弄ぶ気分にはなれなかったぜ。
3.
女の娘が水死体となって下流の川で発見されたんだ。
警察が言うには、川の側で遊んでいるうちに転落したとのことだ。事故死。
だが、女は納得してない。
絶対事件だと言って、手作りのビラまで作って近所に配り情報を集めてる。いや、らしいんだ。
オレは、女が訪ねてきても居留守をつかってるから。
そ、そりゃ、オレだって気の毒だと思うさ。
素人なりにも警察発表はおかしいように感じる。
でも、オレに何ができると言うんだよ?
はっ! 面倒なことなど真っ平だ。人付き合いなど、ハンドルという防護服を着、PCという防波壁をはさんでディスプレーごしにするに限る。
そんなことよりもだよ。
娘の怪死を機に女が家にいる機会が多くなったのがオレには幸いだ。
っと、不謹慎、不謹慎。心の中で故人に手を合わせ、双眼鏡で2軒隣を覗く。
いたいた。
黒系の洋服が却って女の体格を目だたさせる。
この時間、あの出窓からぼうっと外を眺めていることが多くなった。
何日目だったっけ? 大分疲れてきてるようだが、まだ四十九日にはなってないはず。
どれ、近くに行って見るか。
例によって例のごとく、買い物に装って外に出たオレは女の家の前をとおり過ぎようとした。
4.
呼び止められたような気がして、振り向いた。
やつれ顔の女と目が合う。
いっちゃってるなあ。生気の色がない。
もう一度女の口が開く。誰かの名前を呼んでいる。オレが自分を指差すとコクンと頷く女。
あっと、思い出したぞ。その如何にも勇ましい響き…
同じ団地に住む小学校に上がったばかりの男の子の名前だ。どっかの表札で見たことがある。さては小学生に間違えられたか。
チマタカヨ! ってそんなことは慣れっこなんだが、女のほうだ。
完璧にイカれちゃってるか。
えっ? 何かもらってほしい?
成程、娘の形見分けということか、しばらく考えて分かったオレは、はーい、と答える。
そうそう。キで始まってイで終わる人には逆らわないほうがいい。それに、堂々女の家にあがれるチャンスだ。
今夜のオカズは~♪ 鼻歌でも歌いたい気分だぜぃ!
玄関に入ったオレの鼻に、ウサギ小屋のような匂いが飛び込む。
飼ってたのかな? まあいい、言われるままに靴を脱いであがり込む。
例の出窓の部屋は、死んだ娘の勉強部屋だったようだ。とそこで歩を止めた女とオレの距離が縮まる。
やっぱ大きいよ。オレの目の前に女のオッパイがある。
うほほ。このまま小学生の振りを続ければ、抱きしめられて顔を埋めることが出来るかな?
いかん、いかん。あまりジロジロ見てたらボロが出ないとも限らん。
オレは入り口で立ち止まり、後ろを向いて待った。
がさがさダンボールを物色する音。
暫くあって背後に女の気配を感じた。ウサギ小屋の匂いが強まる。
んだよぉ~ この女、風呂に入ってないのか?
三十路女の体臭と思えば、まあまあそれもよし。早くオレをかき抱いてくれないかなあ、と妄想モードに浸るオレの視界に一瞬白いものがよぎる。
きょとんとして振り返ったオレの視界に飛び込んできたのは、女の般若のごとき形相だった。
5.
でも、女の形相を顧みることが出来たのはほんの一瞬だったさ。
そうさ、首に紐みたいなものが巻きついちまって、動きがとれないんだよ。
首周り全部に圧迫感を感じる。
首を絞められてるのかな? って、苦しいじゃんかよぉ!!
一体、誰が!?
答えはひとつだな。だってこの部屋には。
うん、概ねそれで正解だ。頭の後ろに柔らかいものを感じる。それに匂うし…
暢気にしてる場合か~!!
苦しい、苦しいよ~!
顔面から広がった痺れは、口中に伝わり歯茎の辺りまで感覚がなくなってくる。
首に巻きついた紐のようなものを取り去ろうと動かしていた手も、指先の痺れとともに役立たずになっていった。
一瞬垣間見た女の形相を思い出す。
何が狂人なものかよ!
そうさ、あれは正気の目だった。正気で殺意を抱いていることがありありだ。
鬼子母神だったっけ? 子供をとらえては喰う鬼女。前にみたことのあるこの魔物の絵そのものだったよ。
でも何でオレを…
と、またしても信じられないことが起こった。
見ればオレのつま先は完全に床から離れているのではないか!
吊り下げられてるのか~?
何たる力! 将しく女魔! いくらオレがチビだって…
ユングの心理学だったかな? 母性の二面性。
生命を生み慈しみ育てるのも女性性ならは、苛み壊し殺すのも女性性。
こりゃ、ダメだわ。殺されちまうな。
女の締め付けがいっそう強まる。
けどもう、あまり苦しさを感じない。不思議と恐怖感も沸いてこない。
いや、むしろ心地よいくらいだ。赤ん坊のころお袋の胸に抱かれていたあのときの…
ざまあねぇな、記憶にある訳ねえじゃんかよ。でも、間違いなくそうなんだ。
話に聞く死の安定ってヤツか?
ふっ! 仮想大女を暴れまくらせたオレが、リアル大女の手にかかって人生の終止符を打つってことかよ。
未成年アマチュアスポーツ選手や果ては女子小学生まで妄想ネタにもちだして変な小説を書きまくった報い、ってことにしときゃ、ちったあカッコいいなあ?
鼻から、耳から、口から、血が噴出しているのが分かる。そして、ズボンを伝って失禁尿が滴り落ちるのが。
ちぇっ! ションベンかよ。
最期にもう一発、白いほうのを出したかったな…
ここで考える能力が雲散霧消した。
6.
( 語り手である恐山のイタコ )
オレの死体は未だ見つかってないそうだ。
えっ?! PCばっかり弄ってないで質問に答えろ、って?
んだよ~?! うっせーぞ、このペッポコ刑事! 勝手にオレの魂を呼び出したんだ、先に用を片付けさせろ。
わーった、わーった。これ書いたら終わりにするから。
はんっ! オレは白神山地を越えて更に北に来ちまったようだな。
成仏できず、霊山である恐山で彷徨っているってことだ。
大概は成仏できないさ。
って、せわしい刑事だな! 三人も変死者出しといて国家権力風吹かすな!
えっーと、続けるぞ。この刑事が言うにはなあ。
あの女、名前を呼んでいた小学生の男の子も、オレと同じ方法で絞め殺したらしいんだ。
この子は、すぐに見つかったらしいんだがな。
そうさ、娘の水死体があがった川に、これみよがしに女が遺棄したんだから。
この事件はすぐに話題となり、北の町へとマスコミが殺到した。
連日ワイドショーが放送するもんでさあ、同時に女の娘の怪死も世間の関心を引き付けた。
けどよう、なあ、聞いてくれよ。
なのに、オレの失踪は全然話題にもならなかったんだよ~!
今の今までほったらかされてさ。
えっ? 生前の行いが行いだからな、だって?
おいおい、本当のことを言うなよぉ。
何だよ、ヘッポコ? だから死体を見つけてやるためにイタコにお前を呼び出させたんだろう、だって?
ウソ付くな! 小学生殺害のほうの公判対策だろうがよ。
だ~か~ら~、書いてあるだろ? 玄関先で殺したのが小学生のとき、オレは部屋まであげられた。そこらの混同が女の供述が二転三転した理由だろうよ。
ここまでしゃべってやったんだ、あとはテメエらでオレの死体見つけてとっとと事件化しやがれ! いいな?!
それより、オレはもうひとつやることがあるんだ。
そうだよ~ BBSに禁止書き込みされてるかもしれないんだよ~
えっと、オレが禁じたのは、っと。
・武器を使っての殺人
・現実に起こった犯罪・事件に結び付けた書き込み
されてそうな雰囲気…
だぁっ! 重いなあ、このPC!
今度はSMからは距離があるかもしれませんが。
話題のある事件の解明と、2度とこのようなことが起きないこととを祈願しての公開です。【近未来の某ネット掲示板の管理者】
1.
いつぞや某トールフェチ向けテキスト創作サイトの管理人だ。
やっぱ、こないだの顛末書くことにするよ。
あの後、何人かの女生徒たちから同じ方法でなぶりものにされ辱められた。
二人分のオシッコを飲めた、って認められたんだろうな、部室から叩き出されたオレはコンビニの包みを置いてあった草むらでゲエゲエ吐いた。
それから、グラウンド隅の水道の所まで行って、口や鼻を漱ぐ。そうさ、このザマじゃ道路なんかに出られないよ。
だが、これが裏目に出たんだ。偶々パトロール中の警官が近くを通りかかったんだよ。
そうだよなあ。夜中だもの水道の音が響くわな。
オレは現行犯逮捕されてしまった。
そして、取調べの結果は?
変質者であるオレは女子高に侵入し、屋外トイレの便器を嘗め回し便溜りの水を啜っていた、こういうことになってしまった。
…まあ、黙秘は続けたんだがなあ。主催しているサイトが災いした。
いや、オレのサイトは、こんな趣味じゃないぞ!
もう、格調高き特殊性癖サイトとまでは言わんけどさあ。
そこらの同列サイトとは一線を画しているつもりだ。
こないだも言ったけどよう。BBSも排泄物を口にするなどの記述がある作品または書き込みは厳禁している。
…そうなんだ、原因はリンクサイトなんだよ。調べて貰えば分かるが、この手の記述があるところもある。
お陰で、オレも同一趣味ということにされちまったんだよなあ。
ま、入院という口実でしばらくサイトを休まざるをえなかったがな。
でも幸い素顔は晒してないもので、WEBでの信用を失うことはなく、サイト自体は継続できた。
とはいうものの、もうこの町には住むことができない。
オレは遠くへと引っ越した。
2.
世界遺産・白神山系の南麓に位置するこの町は長閑だ。
町が試みとして作ったこの団地がオレの新居さ。
田舎だな。けど都会と同じくベタベタした近所づきあいのないのがオレ向きだ。
いやいや、それどころか田舎と都会のよいとこ両取りの天国かもしれない。
表立って誰を注目することもなく、誰からも注目されることもなく。
もっとも小学生並みの体格に加え、ネクラ、影薄と3拍子そろった心霊写真のような存在のオレなど、たとえ注目されたくたってされようがないからな。
まあ、オレはPC一台あればどこにいようと同じことだ。
せいぜいまた、エロ小説でも書いて楽しむとしよう。
そうそう、重要なことを言うのを忘れてた。
2軒隣に、小学生の娘のいるバツイチ女の家があるんだ。
ん? なんとか小学校3組女子みたいな娘かよ? だって?
違う違う。母親のほうさ。
なんせ、あんな目に遭わされたんだからなあ。もうガキはこりごりだ。
っと、その母親なんだが。年の頃は30をちょっと出たくらいかな?
ま、オレの小説の定番キャラのように荒唐無稽なデカ女ではないものの、それでも大抵の男どもよりは大きい。
ヒョロヒョロのっぽではなく、肩幅の広く胸板は厚く、腰も張った均整のとれた体格なのが嬉しい。
極秘に調べたところによると、若いころ関東の温泉地で仲居をやっていたらしく、それでこのようなオレ好みの体型になったんだろう。
長い髪… 昔なら流行ったであろう面長の瓜実顔… オミズ系のケバい雰囲気…
越してからいくらもたたないうちに、オレのPCのHDはこの女の写真で埋まった。
高校生たちの写真は警察に押収されちまったもんな。新しいオカズを探す必要があったんだよ。
そうさ。食前食後に3回ずつのオナニーがオレの日課だもの。
けど…
ある日この北の町に、大変なことが起こったんだよ。
あの日ばかりは流石のオレも、丸一日下半身を弄ぶ気分にはなれなかったぜ。
3.
女の娘が水死体となって下流の川で発見されたんだ。
警察が言うには、川の側で遊んでいるうちに転落したとのことだ。事故死。
だが、女は納得してない。
絶対事件だと言って、手作りのビラまで作って近所に配り情報を集めてる。いや、らしいんだ。
オレは、女が訪ねてきても居留守をつかってるから。
そ、そりゃ、オレだって気の毒だと思うさ。
素人なりにも警察発表はおかしいように感じる。
でも、オレに何ができると言うんだよ?
はっ! 面倒なことなど真っ平だ。人付き合いなど、ハンドルという防護服を着、PCという防波壁をはさんでディスプレーごしにするに限る。
そんなことよりもだよ。
娘の怪死を機に女が家にいる機会が多くなったのがオレには幸いだ。
っと、不謹慎、不謹慎。心の中で故人に手を合わせ、双眼鏡で2軒隣を覗く。
いたいた。
黒系の洋服が却って女の体格を目だたさせる。
この時間、あの出窓からぼうっと外を眺めていることが多くなった。
何日目だったっけ? 大分疲れてきてるようだが、まだ四十九日にはなってないはず。
どれ、近くに行って見るか。
例によって例のごとく、買い物に装って外に出たオレは女の家の前をとおり過ぎようとした。
4.
呼び止められたような気がして、振り向いた。
やつれ顔の女と目が合う。
いっちゃってるなあ。生気の色がない。
もう一度女の口が開く。誰かの名前を呼んでいる。オレが自分を指差すとコクンと頷く女。
あっと、思い出したぞ。その如何にも勇ましい響き…
同じ団地に住む小学校に上がったばかりの男の子の名前だ。どっかの表札で見たことがある。さては小学生に間違えられたか。
チマタカヨ! ってそんなことは慣れっこなんだが、女のほうだ。
完璧にイカれちゃってるか。
えっ? 何かもらってほしい?
成程、娘の形見分けということか、しばらく考えて分かったオレは、はーい、と答える。
そうそう。キで始まってイで終わる人には逆らわないほうがいい。それに、堂々女の家にあがれるチャンスだ。
今夜のオカズは~♪ 鼻歌でも歌いたい気分だぜぃ!
玄関に入ったオレの鼻に、ウサギ小屋のような匂いが飛び込む。
飼ってたのかな? まあいい、言われるままに靴を脱いであがり込む。
例の出窓の部屋は、死んだ娘の勉強部屋だったようだ。とそこで歩を止めた女とオレの距離が縮まる。
やっぱ大きいよ。オレの目の前に女のオッパイがある。
うほほ。このまま小学生の振りを続ければ、抱きしめられて顔を埋めることが出来るかな?
いかん、いかん。あまりジロジロ見てたらボロが出ないとも限らん。
オレは入り口で立ち止まり、後ろを向いて待った。
がさがさダンボールを物色する音。
暫くあって背後に女の気配を感じた。ウサギ小屋の匂いが強まる。
んだよぉ~ この女、風呂に入ってないのか?
三十路女の体臭と思えば、まあまあそれもよし。早くオレをかき抱いてくれないかなあ、と妄想モードに浸るオレの視界に一瞬白いものがよぎる。
きょとんとして振り返ったオレの視界に飛び込んできたのは、女の般若のごとき形相だった。
5.
でも、女の形相を顧みることが出来たのはほんの一瞬だったさ。
そうさ、首に紐みたいなものが巻きついちまって、動きがとれないんだよ。
首周り全部に圧迫感を感じる。
首を絞められてるのかな? って、苦しいじゃんかよぉ!!
一体、誰が!?
答えはひとつだな。だってこの部屋には。
うん、概ねそれで正解だ。頭の後ろに柔らかいものを感じる。それに匂うし…
暢気にしてる場合か~!!
苦しい、苦しいよ~!
顔面から広がった痺れは、口中に伝わり歯茎の辺りまで感覚がなくなってくる。
首に巻きついた紐のようなものを取り去ろうと動かしていた手も、指先の痺れとともに役立たずになっていった。
一瞬垣間見た女の形相を思い出す。
何が狂人なものかよ!
そうさ、あれは正気の目だった。正気で殺意を抱いていることがありありだ。
鬼子母神だったっけ? 子供をとらえては喰う鬼女。前にみたことのあるこの魔物の絵そのものだったよ。
でも何でオレを…
と、またしても信じられないことが起こった。
見ればオレのつま先は完全に床から離れているのではないか!
吊り下げられてるのか~?
何たる力! 将しく女魔! いくらオレがチビだって…
ユングの心理学だったかな? 母性の二面性。
生命を生み慈しみ育てるのも女性性ならは、苛み壊し殺すのも女性性。
こりゃ、ダメだわ。殺されちまうな。
女の締め付けがいっそう強まる。
けどもう、あまり苦しさを感じない。不思議と恐怖感も沸いてこない。
いや、むしろ心地よいくらいだ。赤ん坊のころお袋の胸に抱かれていたあのときの…
ざまあねぇな、記憶にある訳ねえじゃんかよ。でも、間違いなくそうなんだ。
話に聞く死の安定ってヤツか?
ふっ! 仮想大女を暴れまくらせたオレが、リアル大女の手にかかって人生の終止符を打つってことかよ。
未成年アマチュアスポーツ選手や果ては女子小学生まで妄想ネタにもちだして変な小説を書きまくった報い、ってことにしときゃ、ちったあカッコいいなあ?
鼻から、耳から、口から、血が噴出しているのが分かる。そして、ズボンを伝って失禁尿が滴り落ちるのが。
ちぇっ! ションベンかよ。
最期にもう一発、白いほうのを出したかったな…
ここで考える能力が雲散霧消した。
6.
( 語り手である恐山のイタコ )
オレの死体は未だ見つかってないそうだ。
えっ?! PCばっかり弄ってないで質問に答えろ、って?
んだよ~?! うっせーぞ、このペッポコ刑事! 勝手にオレの魂を呼び出したんだ、先に用を片付けさせろ。
わーった、わーった。これ書いたら終わりにするから。
はんっ! オレは白神山地を越えて更に北に来ちまったようだな。
成仏できず、霊山である恐山で彷徨っているってことだ。
大概は成仏できないさ。
って、せわしい刑事だな! 三人も変死者出しといて国家権力風吹かすな!
えっーと、続けるぞ。この刑事が言うにはなあ。
あの女、名前を呼んでいた小学生の男の子も、オレと同じ方法で絞め殺したらしいんだ。
この子は、すぐに見つかったらしいんだがな。
そうさ、娘の水死体があがった川に、これみよがしに女が遺棄したんだから。
この事件はすぐに話題となり、北の町へとマスコミが殺到した。
連日ワイドショーが放送するもんでさあ、同時に女の娘の怪死も世間の関心を引き付けた。
けどよう、なあ、聞いてくれよ。
なのに、オレの失踪は全然話題にもならなかったんだよ~!
今の今までほったらかされてさ。
えっ? 生前の行いが行いだからな、だって?
おいおい、本当のことを言うなよぉ。
何だよ、ヘッポコ? だから死体を見つけてやるためにイタコにお前を呼び出させたんだろう、だって?
ウソ付くな! 小学生殺害のほうの公判対策だろうがよ。
だ~か~ら~、書いてあるだろ? 玄関先で殺したのが小学生のとき、オレは部屋まであげられた。そこらの混同が女の供述が二転三転した理由だろうよ。
ここまでしゃべってやったんだ、あとはテメエらでオレの死体見つけてとっとと事件化しやがれ! いいな?!
それより、オレはもうひとつやることがあるんだ。
そうだよ~ BBSに禁止書き込みされてるかもしれないんだよ~
えっと、オレが禁じたのは、っと。
・武器を使っての殺人
・現実に起こった犯罪・事件に結び付けた書き込み
されてそうな雰囲気…
だぁっ! 重いなあ、このPC!