ホトトギスとアヤメグサ ~ 花札的には残念ながら、万葉集ではこの組み合わせで歌われることが多いのです

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さて、今日は疑惑の祝日・みどりの日です。
いきなり内輪話になりますが、最近とみに縁遠くなってしまった中の人の叔母が、みどりでしてね。
しかも5月生まれ。
残念ながら日付はすこしずれてしまってますが、もしこれが4日だったら…
疑惑の祝日の意味も少しは出てきたでありましょうが、ま、そうは問屋が下ろさない、
な訳ですから、みどりの日はスルーして噺を進めましょう、
どの道、4月29日時点で噺してる事もありますし。
専ら5月第一日曜である点に注目し、お馴染み万葉噺をしていきましょう。

先ずは…

霍公鳥 厭ふ時無し 菖蒲草 鬘にせむ日 此ゆ鳴き渡れ

ふふん、1日の日にとんだとこで万葉歌が出ましたよね。
先ずはここから見てゆくとしまょうか。

巻十1955、夏の雑歌にある作者不詳の歌です。
まま、それはそれでいいのですけど、巻十八4035を見て下さいな。

霍公鳥 厭ふ時無し 菖蒲草 鬘にせむ日 此ゆ鳴き渡れ

全く同じ…
(4035の)詞書を見て行きましょう。4032の前にありますわ。
天平二十年(748年)春の三月二十三日、左大臣橘家(橘諸兄)の使者、造酒司令史(さけのつかさのさかん)である田辺福麻呂(たなべのさきまろ)が、国守大伴宿祢家持(おおとものすくねやかもち)の館でもてなしを受けた。そこで新しく歌を作り、またさらに、古歌を歌うなどして互いに思いを述べた

よそ様から現代語訳をペタリ、ま、ま、本BLOGの性質上苦しかるまいです。
そして歌のあとに左注があります。
今度は、私が原文を転記しましょう。
右の四首は、田邊史福麿のなり。

つまりは古歌を引用したという事なんですわ。
いえね、同じ歌が重出するってのが、珍しいケースだったんで引き伸ばして喋ってみたのですが。

兎も角、花札的には残念な事ながら、万葉集にはホトトギスとアヤメのセットの歌が多い、という事なんです。
全部で11首、但し、このダブリがありますから、実質10首ということになりますが。
そしてその10首が長歌が7で短歌が3てのも興味深いです。

もう少しみてみましょう。
巻十九4175に家持の歌があります。

霍公鳥 今來鳴き始む 菖蒲 鬘くまでに 離るる日あらめや


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霍公鳥を詠む歌二首の最初の方です。
その後ろの4176もそうなんですが、歌の後ろに何かが付いてるんですよ、
ううん、左注じゃない、下注どもててましょうか。
えっと、毛能波三箇辞闕之 、も・の・は、三つの辞を欠く とあるのですわ。
つまり、偶然欠けたのではなく、作者家持が計画的犯行でやったということですよね。
使用頻度の多い助詞ということになりましょう。

んで、歌の方なんですが、真ん中へんに注目。
アヤメグサをカヅラにする日まで、と言ってます。
で何時の事?5月5日ですよ、端午の節句まで今鳴いてるホトトギスは飛び去る事はないであろう、と歌ってる訳です。
うーん、タイムリー…

もう一首、逆順になりましたか、巻八1490を見ましょうか。
同じく大伴家持の歌です。

霍公鳥 待てど來鳴かず 菖蒲草 玉に貫く日を いまだ遠みか


同じ題材で、完全に逆順でしたわ、あ、時系列的にもです。
玉に貫く日、ショウブを珠にして紐の尾に通す日です。
同じく5月5日の飾りですわ。
だから、ホトトギスが来て鳴かないのは、5月5日にまだ日があるからだ、と歌ってる訳です。

さて、みどりの日をスルーするつもりで書き出した本稿、案外とみどりの日噺になってしまったかもしれませんね、あはっ!

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