本日は2月最終日曜。お約束どおり、『梅花歌三十二首并序』の最終回をばお噺しします

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愛用のデジカメが、どうもこのとこ、夜空の撮影ができなくなってしまってるため、お星情報には触れず仕舞でおりました。
そう、宵の明星
西空でピィカピィカ輝いております。
調べてみるに去る15日、最大光度(-4.9等級)だったんですね。
そして月末には留を向かえ、やがては内合、いなくなってしまう運びとなっておりますです。

さあて、2月は逃げるで、過ぎんのが早い、本日が最終日曜です。
予告どおり、『梅花歌三十二首并序』の最終回と参りましょう。

巻五836が、

梅の花 手折り挿頭して 遊べども 飽き足らぬ日は 今日にしありけり


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作者が陰陽師礒氏法麻呂、
ほうほう、陰陽師なんてのが当時からいたん?
正八位上相当で大宰府にも一名の定員があったと記されます。
はい、後半に差し掛かり、段々と下位の者が登場しますねえ。
ここらは暫く、九州も僻地から来た下級官吏の歌が続きます。
いや、ホント、この折は大宰府に一同に会してたのでした。

代表して840、壱岐目村氏彼方の歌を掲げましょうか。

春柳 縵に折りし 梅の花 誰か浮かべし 酒杯の上に


春柳はカヅラに掛かる枕詞です。
巻十一に「春柳葛城山に立つ雲の立ちても居ても妹をしそ思ふ」なんて用例がてります。
村氏ねえ、村上?村国?
下国の目なんて最下位官位の官吏も同様に唐風の一字呼びされてるってことです。

愈愈三十二首の最後が、これ、

霞立つ 長き春日を 挿頭せれど いや懐かしき 梅の花かも


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846の小野氏淡理で打ち止めとなります。
官職なし?それにしては、上手く打ち止めに仕上げたもんですよ、
直後に員外が続くものの、一応はこれで終了となります。
…おっと、挿絵間違ったか。
万葉時代のウメは全て白梅で、紅梅は未だ渡来してなかったのでしたね。

さてさて、改元の折から散々に言われ続けた、その序とは如何なるものでしょうか?
改めて調べ、掲載してみるに、以下のようになりますか。

天平二年正月十三日、萃于帥老之宅、申宴會也。于時、初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。加以、曙嶺移雲、松掛羅而傾蓋、夕岫結霧、鳥封縠而迷林。庭舞新蝶、空歸故鴈。於是蓋天坐地、促膝飛觴。忘言一室之裏、開衿煙霞之外。淡然自放、快然自足。若非翰苑、何以攄情。請紀落梅之篇。古今夫何異矣。宜賦園梅聊成短詠。


これを読み下せば、
天平二年正月十三日に、帥の老の宅に萃まりて、宴會を申きき。時に、初春の令月にして、氣淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫ず。加以、曙の嶺に雲移り、松は羅を掛けて蓋を傾け、夕の岫に霧結び、鳥は縠に封めらえて林に迷ふ。庭には新蝶舞ひ、空には故鴈歸る。是に天を蓋とし地を座とし、膝を促け觴を飛ばす。言を一室の裏に忘れ、衿を煙霞の外に開く。淡然に自ら放にし、快然に自ら足る。若し翰苑あらぬときには、何を以ちてか情を攄べむ。請ふ落梅の篇を紀さむ。古と今と夫れ何そ異ならむ。園の梅を賦して聊かに短詠を成す宜し。


となります。

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