柿はいかにも歌枕になりそうな秋の果物ですが、意外や意外、万葉集にはなんと一首も登場しないのです。 ← このとこタイトルを穿ちすぎたので、今日は素直に

img_649a2b8264206029f6bccecfa9c086de233086.jpg
なんやかやで、秋も深まって参りました。
そうですよ、初秋の極短い時期にしか店頭に並ばぬナシに変わって、この時期旬になるのがカキ。
2桁価格を見繕って食卓に並べてる台所番・齋藤杏花(さいとうあんな)です。
全く縁遠い政治の世界でもやってるのが人とあって、事情は変わらないようですね。
何でも、首相官邸に奈良の生産者から富有柿が届くのが毎年の恒例とか、
ニュースで知りました。
そして送られた首相も一句返すのか慣例になってるとの事も。
でね、石破さんですよ。
奈良の柿 郷にも浦にも 茂る秋
これが歴代に比べ出色してるとかで、評判になってました。
ねえ、首相になってからはクタされる一方だった石破さんが褒められるのを、初めてみましたわ。

晩秋といえば柿と言うのが、ホント、日本の風土ですよ。
百姓家といえば必ず柿の木がある、
私が生まれた時には既に伐採済みでみたことはないのですが、我が家にもその昔渋柿の大木が一本あったとか。
既視感爆発、古き佳き日々の我が里が目に浮かぶとこです。
柿木坂_01-e1650105173922.jpg

ああこれなら、今日の日曜・万葉噺は大楽勝!
ちょっくら思い出しはしないものの、このニッポン情景定番の秀歌があるに違いない、
と思いきや…
なんと、タイトルに記したとおりなんです。
まさか柿がなかった訳でもない、なにせ柿本人麻呂なんてのがいるくらいですからねえ。
けど調べても出てくるのは他の果物ばっか、毛桃なんてお馴染みのも。
けどまあ、秋には不向き、ってことで巻十九の4164-4165を拾ってみました。
大伴家持が巻六の山上憶良の歌に歌に追和した長歌反歌です。

ちちの實の 父の命 柞葉の 母の命 おほろかに 情盡して 思ふらむ その子なれやも 大夫や 空しくあるべき 梓弓 末振り起し 投矢持ち 千尋射わたし 劍大刀 腰に取り佩き あしひきの 八峰踏み越え さし任くる 情障らず 後の代の 語り繼ぐべく 名を立つべしも

大夫は 名をし立つべし 後の代に 聞き繼ぐ人も 語り續ぐがね


詳細にはふれません。
何となくわかればいい、中味は歌というよりスローガンみたいなものなんだから。
ここでの注目点は冒頭も冒頭、枕詞の『ちちの実』なんです。

多数説は銀杏の実ですけど、これを天仙果(イチジク)とする説もあるのです。
形が乳に似て白い汁を出すからこういうのでしょう。
学術名イヌビワってのですか。
ビワに比べて不味いのでイヌが付いたのでしょうね。
17世紀の今のイチジクが渡来するまではこれがイチジクと呼ばれてました。

そして今のイチジクが別名南蛮柿なのです。

p_002inu0_IMGP2729.jpg