当初とは少々様変わりしてきた、齋藤杏花 (さいとうあんな)の万葉噺、新年度も続きますよ~!

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確かに今年は、バカ陽気ですね。
年度内で、あらかた、サクラは終ってしまいました。
そして足元をみるに、今年もまた、ハナニラとカタバミの競演です。
さてはて地球はホントに温暖期に入ったものやら、4/1が終った今堂々いう事ができるようになりました。

そして今日は日曜で万葉集の日、万葉集に嘘の歌があったかなあ?などとつらつら慮るに。
近代短詩型の祖・正岡子規が以後の歌集を全て理屈と嫌い、盛んに復古を唱えた万葉集にも槍玉の『嘘の趣向』が見つかりました。
案外有名なとこ、巻一は64のこの歌です。

葦辺行く 鴨の羽交ひに 霜降りて 寒き夕は 大和し思ほゆ

志貴皇子、噺した折、この代表歌には触れなかったんですね。
少々意外でした。
嘘の趣向でしょうが?!
鴨っちゃ鳥類で恒温動物だ、寒空に野営したとこで羽が霜降りになるなんて非科学的なことはありえません。
昔、この噺は書いた事があるぞー、

「歌よみに与ふる書」、異議あり!

2005年05月06日

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この一冊、武闘派ネット論客を自認する方はぜひ読んどくといいです。
全編に書きたてられた既存権威に対する酷評は、もう罵言といってもいいくらい。
たとえば、小倉山百人一首29、凡河内躬恒の歌、

  心あてに 折らばや折らむ 初霜の
 置きまどはせる 白菊の花

なんかは、こうです。

「此躬恒の歌戸人一首にあれば誰も口ずさみ候らへども一文半文の値うちも無く之駄歌に御座候。此歌は嘘の趣向なり。初霜が置いたくらいで白菊が見えなくなる気遣い無く之候」

うーん、確かに嘘はいけません。理屈を並べてもひとのこころをうつことはできません。
ただ、写生主義を提唱した子規流でいけば、万葉集志貴皇子の歌

  葦辺ゆく 鴨の羽交に 霜零りて 寒き夕は 大和し思ほゆ

などという歌はやはり同じ理由で「一文半文の値うちもない」ということになってしまいますよねぇ。

頼山陽の漢詩「天草洋二拍ス」


 雲耶山耶呉耶越 水天髣髴青一髪
 萬里泊舟天草洋 烟横篷窗日漸没
 暼見大魚波間跳 太白當船明似月


 雲カ山カ呉カ越カ 水天髪髭青一髪
  万里舟ヲ泊ス天草洋 煙ハ篷窓二横タワリテ日漸ク没ス
瞥見ス大魚ノ波間二躍ルヲ 大白船二当リテ明月二似タリ

もダメ。J・シュトラウスの円舞曲「美しく青きドナウ」もしかりでしょう。

なぜならば、眼に写る現実を写生すれば、生きものである鴨は霜が羽に置く前に飛び立つであろうし、月は金星の一万倍以上の明るさであるし、ドナウは赤茶けた色の川水であり、これらはすべて「嘘の趣向」でしょうから。

もとより、前書後段での反論「菊は霜が置くと赤みを帯ひる。だから自菊と色菊の区別がつかなくなるでのあり、躬恒はそれを歌っているのだ」などというチャチな屁理屈は論外ですよ。

しかし、現実に眼球に映るものだけが真実の世界なのであり、これのみが至上ときめつけるのはどうなんでしょうか?

霜の凄さに感じた躬経の気持ちが菊の見分けをつけさせなくなったのであり、志貴皇子の旅情一前にもいったとおり辛く厳しいもの一が朝の寒さを水鳥の羽に霜が置くほどに感じさせたのであるし、天草の雄大な風景が山陽をして金星をマイナス四コンマ四等級よりは一万倍以上明るいマイナス十コンマ六等級近くに見さしめ、ウィーンを愛するヨハンの心が国の象徴であるドナウを美しく青く見せたんですよ。

『嘘の趣向』ではありません。皆、心眼で見た真実をかたっているのです。
目に映る事実のみの描写ならば、歌はいりません。写真機と字引があるば十分です。

さてさて、小学生が携帯で写メを楽しみ、ワンタッチで辞書検索ができるこの時代に子規が生きてたら、どのような「歌よみに与ふる書」になったでしょうか?


その後色々加筆の付いた「歌よみに与ふる書」、異議あり!ですが、『目指せ!! 平成の女蜀山人!』のJK時代オリジナルはこれです。
それにしてもですよ。
当時は携帯写メなんてのが最先端の流行だったんですね。
いやはや進化というものはげにも目覚しい、隔世の感です。

噺は飛びますが、昨今急速に研究が進んできてるのが恐竜です。
なんでも最新の研究成果では、爬虫類よりも鳥類に近い、と。
それ聞いてから、私、どうもよくわかんなくなって色々調べ出したんです。
するとですよ。あれも恐竜じゃない、これは別の種族だ…
例えばのび太の恐竜なんでは違う、あれは水生爬虫類の首長竜っていうらしんです。
却ってわかんなくなって、じゃ恐竜っちゃあんなんだい?と、疑問が深まり出した折、
「絶滅した恐竜のうちの羽毛恐竜ってのの子孫が今でも生き残ってる。それが鳥類」
これを聞きました。
ようやっとしっくり来ましたよ。
羽毛があって、恐らく恒温動物…

こう繋がるのです、あはっ!

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