時系列は全く逆順。今日が雪の歌を取り上げることとなった日曜恒例の万葉噺です

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どうにか、おらほう、積雪は避けられました。
思えば先週(なのかな?)半ばの、異次元の寒さの折が危機だったんですよね。
事実、読売新聞連載の長谷川櫂[四季]も、万葉集のこの雪の歌をやっておりました。
降る雪は あはにな降りそ 吉隠の 猪養の岡の 寒からまくに

巻二203、詞書に、
但馬皇女の薨じて後、穂積皇子、冬の日雪降るに、遥かに御墓を望みて、悲傷流涕して作らす歌一首
とあります。
作者穂積皇子がなくなった但馬皇女のお墓を望み見て悲涙した、とあれば恋人どおしだった、ってことはお話せずともお分かりでしょう。
そして、この二人、異母兄妹でもあったんですよ。

兄妹婚ね。
流石にこの時代でも両親とも同じ兄妹だっら、チト拙い、古事記にもその手のスキャンダルはあります。
けどまあ、半血きょうだいなら、構わないんですよ。
ですので穂積皇子と但馬皇女の結婚もこの限りにおいてはなんら差し障りもありません。
但しー、ただしです。
但馬皇女は既に、高市皇子の妻だったんですよ。
あ、こりゃ拙いわ…
さざんかの宿 毎年冬になると流れてきます。いい歌ですもんね、恋とは全て不倫なものだとも聞きます。以上、またネカマオヤヂ云々と悪態を書かれそうな一句を投稿した ミユ の補足情報でした。 山茶花は 他人(=ひと)の妻なり 不倫(=こい)の唄 haiku.png
事実、穂積皇子は一時左遷されることになりました。
して、お相手の但馬皇女です。可也夢中だった模様で、先んじて数首が採られてます。
一首ご紹介しましょう。

人言を 繁み言痛み おのが世に いまだ渡らぬ 朝川渡る

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同じ巻二の116です。
女性ながら、なんと力強い歌なんでしょう。これぞ万葉のますらお調
人の女房と枯れ木の枝は…
またしても下世話になってきましたので先の203に戻しましょう。

吉隠は現在の初瀬の近くといわれます。
そうなるとこの歌は雪の歌は雪の歌でも降雪地帯の歌ではない、普段は余り雪を見ない土地の歌であります。
普段見ぬ雪を見た驚きというなら、ほら、有名な相聞歌があったっしょ?
あの天武天皇が子供のようにはしゃいで…

同じ雪の驚きながら、穂積皇子の歌は対照的に、なんと悲しい雪なんでしょうか。

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