コロナ禍。日本社会における真の問題は少子高齢化、それと食料自給率の低さ ~ 東京都内で新たに47人の感染確認…緊急事態解除後で最多 の報を聞きて緊急投稿

あすへの考]【コロナ禍で見えたこと】権威・規律が生んだ違い…歴史人口学者 エマニュエル・トッド氏 69
2020/05/31 05:00
新型コロナ
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 世界に感染を広げた新型コロナウイルスはようやく勢いを減じたように見える。米欧と日本などは「コロナ後」を見据え、日常の回復と経済の再生をめざして動き出している。

 コロナ禍は特に米欧に深刻な被害を与えた。世界一の国力の米国が最多の犠牲者を出し、同じアングロサクソン系の英国が続く。フランス、イタリア、スペインも未知の伝染病に対する抵抗力の弱さを露呈した。

 フランス有数の知識人で歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は事態をどう受けとめているのだろう。3月中旬にパリを離れ、仏北西部ブルターニュの別宅で妻子とともに過ごしているという。スマートフォンの対話アプリを通じ、思いを語ってもらった。

 (編集委員 鶴原徹也)

2016年末、明治維新150年に向けてトッド氏に日本の課題を尋ねると、「私の答えは20年前から変わらない。人口減少対策です」と応じた(パリ・セーヌ左岸のトッド氏行きつけのカフェ周辺で)=鈴木竜三撮影
ただ、被害少なかった国々では、少子高齢化が真の問題
 フランスは5月10日まで2か月近く外出が厳しく制限されました。人々はコロナ禍の囚人になる一方で、社会生活の停止に伴い、常日頃の心配事からは解放された。

 私は1968年の5月革命を思い出します。反体制の学生反乱に労働者が呼応してゼネストを打ち、社会がマヒする中、人々は日々の気掛かりを忘れたものです。

 非常事態宣言が解かれ、外出制限が緩和された今、人々はまるで感染が終息したかのように振る舞い始めている。日常への回帰と言えますが、それは現実の問題に改めて向き合うことを意味します。

 まずはコロナ禍の総括です。

 10万人当たりの死者数を基準にして私は考えます。先進諸国の感染状況から「重度」の国々と「軽度」の国々に二分できます。

 重度で最も悲惨なのは80人超えのベルギー。スペイン、英国、イタリアが50人台で続き、フランスは40人ほど。米国は約30人です。

 軽度のうち1人以下は韓国、日本、シンガポールなど。コロナ禍の猛威に震えた欧州にあって約10人のドイツ、10人を切るオーストリアは例外的に軽度といえる。

 軽重の違いは文化人類学的に説明できます。重度の国には個人主義とリベラルの文化的伝統がある。軽度の国は権威主義か規律重視の伝統です。中国もそうです。概して権威主義・規律重視の伝統の国が疫病の制御に成功しています。

 英米、つまりアングロサクソン圏は近代以降、世界を主導してきました。私は国際秩序を考える時、英米をひとくくりにします。ただ、コロナ被害では事情が違う。英国はスペイン、イタリアに近い。

 また、米国は州によって大きく異なる。前述の通り全米は30人前後ですが、州別で最も深刻なニューヨークは約150人にも及ぶ。北東部は重度です。南東部のフロリダや西海岸のカリフォルニアはドイツ並みです。米国自体、ひとくくりにできません。

 コロナ禍の特徴は高齢者の犠牲者の多さです。フランスの場合、死者の8割は75歳以上。エイズの犠牲者の多くが20歳前後だったのと対照的です。

 冷酷のそしりを恐れずに歴史人口学者として指摘します。概してコロナ禍は高齢者の死期を早めたと言えます。ところで、重度の英米仏は適度な出生率を維持しています。一方で、軽度の日独韓中の出生率の低さは深刻です。長期的視野に立てば、コロナ禍ではなく、少子高齢化・人口減少こそが真に重大な国家的問題です。

マスク・防護具「世界の工場」に依存。脱中国を図るとき
 フランスとドイツの感染者数はいずれも18万人台です。ところが死者はフランスが2万8000人を超えているのに対し、ドイツは約8400人。この差は文化の違いに加え、フランスの失政が影響していると私は考えます。

 メルケル独首相は初期から「国民の6、7割が感染する恐れがある」と表明し、「第2次大戦以来最大の試練」と注意喚起して国民に結束を訴えました。マクロン仏大統領は夫人を伴って観劇し、外出を控える必要はないと公言しました。仏政権は「マスクに感染予防効果はない」「学校は閉鎖しない」など無分別な発言を重ねては撤回、釈明に追われたものです。初動の愚かな過ちです。

 もう一つ。フランスの歴代政権はこの20年来、市場原理を重視する新自由主義政策を採るなかで、公的医療制度を縮小してきました。病床を減らし、人員を削り続けた。マクロン政権も踏襲しました。感染症の処置、治療でドイツと明暗を分けた要素です。

 ただ、仏国民の大半は政権を見限りつつ、外出制限は守った。医療機関は医師・看護師が不足し、防護具も不備のなか、自主管理態勢で臨み、治療に力を尽くしました。政権の失政にもかかわらず、国民は被害拡大の緩和に努めたことを私は強調したい。

 医師らの奮闘はドイツ流の規律重視とは違います。フランス人には「職の誇り」という労働倫理がある。その発露です。

 「コロナ後」にフランスが直面する現実は生活水準の低下です。

 2019年の低所得層を中心とする反政府運動「黄色いベスト」参加者の胸の内にあったのは暮らし向きの悪化への不満でした。そして国民の7割が黄色いベストを支持した。国民の99%が08年から生活水準の低下を経験しています。コロナ禍に伴う経済の停止で生活程度は一段と悪化します。政権不信も高じている。騒乱が起きる可能性は十分にあります。

 米中両国はコロナ禍を巡って互いの生物兵器開発疑惑を言い立てるなど対立を深めています。

 米国の支配層は「コロナ前」に、中国の地政学的台頭を阻むという戦略方針を固めたと私は考えます。分極化する米国政治にあって唯一の一致点でしょう。トランプ米大統領の仕掛けた対中貿易紛争はその一環です。

 米中対立はイデオロギーの戦いでもあります。

 トランプ政権を西欧は民主主義の脅威と非難してきましたが、米国の民主主義は機能している。抑制と均衡は守られ、社会は民主的に組織されています。米国は依然として世界一の民主国家です。

 中国は最先端の情報技術を国民の監視に最大限活用する新たな全体主義国家です。14億という人口規模はあまりに過大です。

 米国が世界一の座を守りたいのなら、中国を打ち負かすしかありません。武力ではなく、外交力と経済力による圧倒です。戦争は誰も望みません。

 グローバル化時代のコロナ禍は私にはこう映る。先進諸国は工場を中国に移し、中国はウイルスを先進諸国にうつす、中国はマスクや防護具を存分に生産でき、先進諸国はそれができない――。

 米国は西欧諸国や日本など他の先進諸国と協調して、中国経済への度を越した依存から脱すべきです。生産の自国化を図り、中国が「世界の工場」である現状を打破すべきです。保健・衛生分野から着手すべきです。国の安全保障に関わるのですから。

 中国経済の10年来の問題は過度の輸出型から脱せないことです。内需向けに転換できない。

 先進諸国が協調して中国からの輸入を減らせば、中国は内需型への転換を迫られることになる。

 私のかなり楽観的な願望です。

 米中対立の帰すうを左右するのは米露関係です。米国はロシアとの関係を再構築すべきです。

 米国は米ソ冷戦期の1970年代初め、大統領補佐官で戦略家のキッシンジャー氏が暗躍し、中国と和解にこぎ着け、対ソ戦を有利にした経験があります。「21世紀のキッシンジャー」なら中国に対し優位に立つためにロシアと和解するはずです。ロシアは応じます。真の脅威は隣の中国ですから。

 これも楽観的シナリオかもしれない。一つ断言できるのは、日本を含めて先進諸国は今、米中対立を巡る自身の立ち位置を決めなければならないということです。

        ◇

 Emmanuel Todd 歴史人口学者。家族構造や人口統計、教育水準などの独自分析に基づき、社会、国家、国際関係を論じる。25歳だった1976年に自著でソ連崩壊を予測、91年のソ連崩壊後に「予言者」として脚光を浴びた。著書に「家族システムの起源」「帝国以後」「シャルリとは誰か?」など。

 (本文中の数値は米ジョンズ・ホプキンス大の28日現在の集計値)___imgix-proxy.n8s.jp_DSXMZO6034327014062020I00001-3.jpg

えっと。東京都の本日感染者が47人とか。
これを聞いたので、1記事新規にあげてみましょう。

某歴史人口学者の提言にちらり触れたのは10日前のことでしたか。
COVID-19による死者は高齢者が大多数を占める。これを考えれば冷酷なようだが、真の問題は少子高齢化だ、と。
うーん。同じ胸の病でも結核が青春病なら、肺炎は年寄り病。昔からいいますよね。
理屈はどうしてだかうまく説明できないんですけど、何故か私は、この提言に大いに賛意を覚えるのです。

それともうひとつ。齋藤杏花 (さいとうあんな)オリジナルを提出するのであれば、我国の食料自給率の低さなんです。
いわずもがなこれでは、食料と共に感染症を国外から入れる可能性が常に付きまといます。
論者が大の外国嫌いである事を考慮に入れて考えてみても、これもまた冷酷な正論ではないでしょうか?

以上、初期からコロナ、コロナと騒ぎすぎでないのか?と疑問を呈していた齋藤杏花からの、謎解き的提言でした。